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 東大の金井利之教授
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 東大の金井利之教授

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 「選挙の顔」にならない、と自民党は菅義偉首相降ろしに走った。そうこうしているうちに、急速に新型コロナウイルス感染症の流行第5波は収束した。感染拡大が菅前首相の「責任」ならば、その逆は前首相の「功績」でなければならない。

 効果のよく見えないコロナ対策に右往左往して、特定の人間を「いけにえ」にする。ウイルスだけでなく、コロナ対策自体が新たな災禍「コロナ対策禍」をもたらす。前首相は与党によって「人身御供」にされたのだ。

 コロナ対策は何が成功し、何が失敗するのか、見当がつかない。政府も与野党もマスコミも民衆も、なりふり構わず「コロナ対策」と称して、標的を掲げて攻撃しがちである。「自粛警察」「県外ナンバー狩り」「飲食営業いじめ」などだ。

 「菅降ろし」のように排除が権力者に向かううちはまだしも、一般民衆の中の差別や分断に向かうと人災は深刻になる。

 年末に向けて第6波があると、専門家により予測されている。この中で、政権が「いけにえ探し」に走らないようにする予防策が本来、与野党に問われなければならない。その上で、民間企業や群衆が差別や分断をしないよう、積極的な対策を政府に取らせなければならない。

 岸田文雄首相の所信表明は第一の政策が「新型コロナ対応」、第二が「新しい資本主義の実現」、第三が「国民を守り抜く、外交・安全保障」であった。

 しかし「新型コロナ対応」は病床と医療人材の確保、在宅療養者対策、希望者全員への2回のワクチン接種と3回目の準備、電子的ワクチン接種証明の積極的活用、司令塔機能の強化、人流抑制、医療資源確保のための法改正など思い付くことの羅列である。

 残念ながら「いけにえ」と「人身御供」を防ぎ、コロナ対策禍からも「国民を守り抜く」方策は十分に示されなかった。

 一方、政権与党に対する野党の務めは、差別・分断・排除という災禍を防ぐ注意喚起である。立憲民主党などの4野党共通政策のコロナ対策が「ゼロコロナ」という差別などを招きやすい表現を使わなかったのは一歩前進である。

 だが、具体策は医療・公衆衛生の整備(医療費削減政策の転換)、エッセンシャルワーカーの待遇改善、打撃を受けた人への財政支援だけである。これらが、国民が共感を示す対策にならず、支援を受ける人々への差別を助長する危険は残されたままである。

 今は一時小康状態である感染がリバウンドすれば、政権与党は支持率維持への恐怖感から「いけにえ探し」に右往左往する危険がある。与党のコロナ対策は、人流抑制の法改正によって「いけにえ探し」の権限強化につながりかねない。

 また、電子的ワクチン接種証明を活用した差別・排除・ハラスメントの横行に、権力としてお墨付きを与える恐れがある。

 米国でのトランプ現象を見るまでもなく、政権が公然と特定勢力を名指しして排除を標榜すると、それに呼応して、群衆が「ゆがんだ正義感」に基づいて、差別や排除を行う災禍が生じうる。

 しかし、与野党とも、こうした見えにくい危機に鈍感で全く無防備である。もしかすると、自民党総裁選のように「人身御供」を探すのが与野党の危険な本音なのかもしれない。総選挙がコロナ対策禍をまん延させないことを願うばかりである。

   ×   ×

 かない・としゆき 1967年群馬県生まれ。東京大卒。2006年から現職。専門は自治体行政学。近著に「コロナ対策禍の国と自治体」。

2021/10/20
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