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連続視標「審判の焦点-2021決戦」6-4地方政策 消えた「地方創生」
 選挙戦で「分権」論議を 千葉大名誉教授 新藤宗幸
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 千葉大の新藤宗幸名誉教授
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 千葉大の新藤宗幸名誉教授

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 与野党が衆院選に向けて発表した政策を過去の選挙公約と比べてみると、一つの大きな特徴がある。それは「地方分権」「地方創生」といった地方政策を重視する観点が大きく欠落していることだ。

 例えば、自民党が10月8日に発表した重点政策には「感染症から命と暮らしを守る」「『新しい資本主義』で分厚い中間層を再構築する」などとして八つの柱が示されていた。このうち、主に地方に関係するのは「日本列島の隅々まで、活発な経済活動が行き渡る国へ」という4本目の柱だが、この項目に地方創生、地方分権の言葉は盛り込まれていない。

 この中では「地方の『伸び代』を活かす」として、地方行政のデジタル化の推進、テレワーク拠点の整備、空き家・公営住宅の活用などによって「地域で柔軟な働き方ができる場所」を増やすと主張するにとどまっている。

 2017年衆院選の選挙公約「この国を、守り抜く」では「地方創生で活力ある元気な地方をつくります」と柱の一つに据えていた。安倍晋三元首相が地方創生の提唱者であることを差し引いても大きな差と言える。

 一方、立憲民主、共産、社民、れいわ新選組の4野党と安全保障関連法廃止を求めるグループ「市民連合」が9月8日に合意した共通政策は「科学的知見に基づく新型コロナウイルス対策の強化」「格差と貧困を是正する」など6項目からなっているが、地方に主眼を置いているような項目はなかった。

 立民がその後に出した公約の中には「自治体の裁量で使途が決められる一括交付金の新設」とあるものの、地方分権の推進とは書いていない。自民党から政権を奪った旧民主党が「地域主権」の実現を「一丁目一番地」と位置付けたこととは隔世の感さえある。

 地方分権などの表現が消えた理由としては、今回の衆院選が、9年近く続いた安倍・菅政権の新自由主義経済政策による社会・経済のゆがみの是正と、新型コロナ感染症が突き付けた医療崩壊をはじめとする危機をいかに乗り越えていくかを重要な焦点としているからである。

 岸田文雄首相の言う分厚い中間層の再構築も、野党4党が主張する格差と貧困の是正も衆院選後の政策対応を見なければ内実は分からないが、安倍・菅政権に対する「自省」ないし「対抗」を意味していると言える。

 これまでの新型コロナ感染症の対策を見ていて気付いたことだが、地方分権の基本である国(中央政府)と自治体が対等な立場で協議し決めていくという姿勢が乏しい。このため、国と地方が協力して政策を実施する力が弱体化している。

 結果として、ワクチン接種の進め方は、国が押し付ける形になって体系化されず効率が悪かった。保健所は従前から統廃合が進みスタッフが削減されていたため、「自宅療養者」のケアが十分にできないなど機能不全は明らかである。

 自民党の言うデジタル化の推進による地方の「発展」の重要性は否定しないが、「豊かな地方」をつくるには、地方の自由度を高めるしっかりとした地方分権の推進が不可欠である。今後の政党間、候補者間の討論では、この「忘れられている」テーマが論じられることを期待したい。

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 しんどう・むねゆき 1946年神奈川県生まれ。中央大大学院修了。立教大、千葉大の教授、後藤・安田記念東京都市研究所理事長などを歴任。専門は行政学。近著に「新自由主義にゆがむ公共政策」。

2021/10/20
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