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連続視標「審判の焦点-2021決戦」6-5エネルギー政策 気候危機対応、見極めよう
 石炭や原子力も論点 自然エネルギー財団常務理事 大野輝之
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 大野輝之・自然エネルギー財団常務理事
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 大野輝之・自然エネルギー財団常務理事

 大野輝之・自然エネルギー財団常務理事

 大野輝之・自然エネルギー財団常務理事

 メルケル首相の後任を決めるドイツの総選挙では、気候変動対策が最大の争点の一つだった。日本の総選挙では、この対策の在り方が大きな争点になっていないように見えるが、国の将来を左右する重要な課題である。

 昨年、政府が2050年に温室効果ガスの排出量を実質的にゼロにする「カーボンニュートラル」を宣言したことは大きな意義がある。だが、最も大切なのは、30年までに二酸化炭素(CO2)を半減することだ。そのために、いま直ちに削減対策を強化しなければならない。

 いったん排出されたCO2は大気中に蓄積され温暖化を加速する。壊滅的な気候危機を回避するための時間はあまり残されていない。総選挙では、誰が真剣に気候危機に立ち向かおうとしているのかを見定めたい。

 最も明確な試金石は石炭火力発電所に対する政策である。いますぐ再生可能エネルギー100%にできるわけではないから、当面の間は火力発電が必要だ。

 だからこそ、同じ量の電気をつくるために、天然ガス火力の2倍以上のCO2を排出する石炭火力の利用を止めなければならない。政府が「高効率」と称する石炭火力も通常のものと排出量に大差はない。欧州各国や米国では、早ければ20年代半ば、遅くとも30年代半ばまでには、石炭火力を全廃することを決めている。

 近く正式決定される新たな日本のエネルギー基本計画では、30年でも電力の約2割を石炭火力で供給するとし、新増設も進めている。これを改めなければ世界の信頼は得られない。

 もう一つの試金石は、CO2排出量に応じて企業に負担を課すカーボンプライシングを導入するかどうかである。欧州連合(EU)では05年に始まり、今日では中国、韓国も含めて世界に広がっている。日本では東京都が10年に導入したが、国レベルでは20年以上、その是非を巡って延々と議論を続けている。

 これが導入されれば、企業は製品の製造方法、使用するエネルギーの選択、そして投資の決定でも、CO2排出量の大きさを考慮するようになる。脱炭素社会の実現へ、企業活動の基本的なルールとして必須のものだ。

 注意が必要なのは、脱炭素化のために「革新的な技術開発」を進めるという政策だ。

 新たな原発「小型モジュール炉(SMR)」の研究開発を進めるという公約も発表された。米国、中国などで開発が試みられているが、コストが当初計画の2倍になったり、開発予定がたびたび先延ばしされたりして、従来の原発と同様の困難に直面している。東京電力福島第1原発事故を経験した日本で現実味のある政策とは到底言えない。

 大切なのは、再生可能エネルギーや省エネ技術など今、利用可能な技術であり、それを全面的に活用するための制度だ。

 これまで日本では、しばしば技術開発の提唱が、直ちに削減対策を強化することを避ける口実として使われてきた。日本でも25年には太陽光発電が最も安くなると予測されている。

 農業に使われていない荒廃農地を再エネ開発に利用できるようにすること、洋上風力発電を推進することなど、やれること、やるべきことは沢山ある。真剣に気候危機に立ち向かう意思を持つ政治家を選ぶのか。日本国民の選択も世界から問われている。

   ×   ×

 おおの・てるゆき 1953年神奈川県生まれ。東京大卒。東京都でディーゼル排ガス対策や地球温暖化対策に取り組み、2013年11月から現職。著書に「自治体のエネルギー戦略」など。

2021/10/20
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