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 日本を含む136カ国・地域は国際的な法人課税制度の強化策で最終合意した。米巨大ITなど多国籍企業の税逃れを防ぐ「デジタル課税」導入と共通の最低税率15%の設定が柱だ。10年近い交渉の末、経済のグローバル化とデジタル化に対応できる形に現行税制を刷新する道筋が付いた。高く評価したい。2023年の実施に向けた手続きを早急に進めてほしい。

 課税強化の協議は経済協力開発機構(OECD)を舞台に、12年に始まった。低税率の国・地域を使った多国籍企業の過度な節税に強い批判が集まる一方、現行税制では工場など物理的な拠点がない企業に課税できないなど、デジタル化の進展に追い付けなくなっている。刷新の機運が高まっていたのは周知の通りだ。

 OECDが10月8日に最終合意を発表し、20カ国・地域(G20)財務相・中央銀行総裁会議が13日、これにお墨付きを与えた。合意した国・地域の経済規模を合計すると世界全体の90%以上を占める。経済の実情に則した実効性の高い税制になることが期待できよう。

 グローバルな法人課税制度の見直しは、企業活動が国際化した第1次大戦後の1920年代以来「100年ぶりの大改革」とされる。この点でも今回の合意は意義深い。

 デジタル課税は、全世界の売上高が200億ユーロ(約2兆6千億円)超で、売上高に占める利益の割合が10%を超える多国籍企業約100社が対象となる。一部の日本企業も含まれるという。合意を受け、英国やフランスなどは独自に設けているデジタル課税を廃止することになった。適切な措置だ。

 15%の最低税率の設定は無論、企業誘致を狙った各国・地域間の法人税率の引き下げ競争に歯止めをかけるのが目的だ。

 だが、いいことずくめではない。23年の実施まで残り時間は少なく、関係国・地域は個別の税法改正や条約締結を急がなければならない。

 デジタル課税の対象が約100社で適当なのか検証も必要だろう。適用基準の利益率10%超は低くはないが、売上高が200億ユーロ超の企業の数は100を優に超えるはずだ。合意文書には制度導入の7年後に対象を見直すとの条項が盛り込まれており、その動向を注視したい。

 金融や海運といった業種が課税対象から外れたが、この妥当性も検証してもらいたい。交渉に参加していたパキスタンとスリランカ、ナイジェリア、ケニアは合意を見送った。4カ国が新税制の「抜け穴」とならないよう、国際社会は翻意を促していくことが肝要だ。

 合意には米国のほか、中国やロシアといった専制主義国家も加わっており、最近では国際協調がうまく機能した希有な例となった。米中対立や所得の格差拡大などで世界は分断され、協調体制は弱体化したとされていただけに、朗報と言える。国際社会はこの成功体験を、新型コロナウイルス対策や温暖化防止といった世界的な課題の解決につなげてしかるべきだ。(共同通信編集委員 金沢秀聡)

2021/10/15
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