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 菅義偉首相は先の記者会見で退陣を決めた心境をかつてなく率直に述べた。1年間の日々に「新型コロナウイルスとの闘いに明け暮れた」と唇をかむ一方、2050年のカーボンニュートラル宣言、デジタル庁設置などの実績には「未来へ道筋を示すことができた」とむしろ胸を張った。

 しかし「ご苦労さま」と拍手を送る気にはなれなかった。まず最優先はコロナ対策だが、今の日本の土台を揺るがすのは人口減少・少子高齢化だ。この「本丸」に正面から向き合わずに「未来」はないはずだ。巨大な宿題をほぼ手つかずで後継へ渡すことに、首相の言葉からは危機感、責任感が伝わってこなかった。

 25年には団塊の世代が全員75歳以上になり医療、介護支出が急増。その先には「2040年問題」が迫る。65歳以上の高齢者人口がピークを迎えて減少に転じるが、深刻なのは15~64歳の現役世代が急減していくことだ。高齢者の割合は全人口の3分の1を超え、現役世代1・5人で高齢者1人を支える状況となる。

 それはどんな社会か。働き手は税や社会保障の重い負担に耐え、企業は人手不足などで業績が上がらず、国内市場が小さくなって物が売れない。要するに戦後の高度成長期と全く逆に経済社会が縮んでいく。

 コロナはワクチン、治療薬の普及でいずれは収束するが、40年まではあと20年足らずだ。人口減少・少子高齢化の流れは止めようがない。子や孫たちの将来のため私たちにできるのは、40年の日本にマッチする「国のかたち」を今から整える努力だ。その具体的戦略と工程表を固め、着実に実行することこそ、政治の本来の最重要テーマだ。

 首相が全く無頓着だったとは言わない。一定収入のある75歳以上が病院などで支払う医療費窓口負担を1割から2割に引き上げたことなどは、社会保障制度の持続可能性を高める改革の第一歩として評価に値する。しかしこれらの政策で何を目指すのか国民には結局見えなかった。首相に欠けたのは長期構想だ。

 40年の日本は、火の車の社会保障制度、借金まみれの国家財政だろう。そして経済社会を支えるのは細り切った現役世代だ。今から取り組むべきなのは、財政の健全化、働き手の生産性を引き上げる教育訓練、人手不足を補う人工知能(AI)やロボットの開発、そして稼ぎ頭となる次世代の成長産業育成ではないか。それこそが菅首相にないと言われ続けた「目指すべき国家像」だ。

 そしてポスト菅の自民党総裁選が始まる。出馬表明した面々はコロナ対策の内容、規模を競い合う一方、野党も含め皆が危機を理由に財政健全化を棚上げしてしまった。

 国の財政の4割は国債発行による借金で長期債務残高は1千兆円超。これは将来世代を支えるどころか全て子や孫へのつけ回しだ。日本の未来をしっかり見据え対処できるのは誰か。それこそが次のリーダーの条件であるべきだ。(共同通信論説委員 古口健二)

2021/9/15
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