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 アフガニスタンの政権にイスラム主義組織タリバンが20年の時を経て戻ってきた。かつて女性らの人権を軽んじ、アフガンをテロの温床にした組織である。それだけにいまメディアによるアフガン情勢、タリバン政権の監視を緩めてはならない。記者が現地で自らの目をこらし、耳を澄ませる取材がますます重要だ。

 20年前の9月11日、米国の繁栄を象徴するニューヨークの摩天楼へ旅客機が次々に突入した。ブッシュ(子)政権は国際テロ組織アルカイダのウサマ・ビンラディン指導者を首謀者と断定、同容疑者をかくまうタリバン政権に報復を宣言し、世界に緊張が高まった。

 当時モスクワ支局に勤務していた私は中央アジアのタジキスタン経由で9月22日、タリバンと対峙していた武装勢力「北部同盟」の旧ソ連製ヘリコプターでアフガン入りし以後45日間、戦乱に巻き込まれていた民衆の過酷な状況を伝え続けた。

 タリバンが支配する首都カブールを逃れ、泥を塗り固めた壁の上にシートをかぶせただけの住まいで飢えに苦しむ避難民の家族を取材した。民家に押し入り若い女性を連れ去る強奪婚、公開処刑など、タリバンの非人道的な振る舞いについて住民らから生々しい証言を得た。これらは現場で直接取材しなければ得られない情報である。

 そして10月7日夕「北部同盟」のアブドラ外相が恒例の野外での記者会見で「米軍の空爆は非常に近い。攻撃目標はここから見える場所」と述べ、カブール空爆が切迫していることを強く示唆。度肝を抜かれた。すぐ別の関係者から「空爆は今夜」との確認を得て、米軍の正式発表を前に「今夜にも空爆実施の可能性」の速報を打った。

 ことし8月15日、米国が支援する政権のガニ大統領は国外へ脱出、タリバンがカブールを制圧し実権を握った。26日には国外に出ようとする市民が殺到するカブール空港付近で爆発が発生。米兵13人を含む180人以上が死亡、過激派組織「イスラム国」(IS)系勢力が犯行声明を出した。タリバンと敵対する組織ではあるが、「テロの温床再び」の強い懸念を抱かせる深刻な事件だ。

 タリバンは女性の働く権利などについて「イスラム法の範囲内」において許容するとの姿勢を示している。だがイスラム法の極端な解釈に基づき、女性に全身を覆う衣装「ブルカ」の着用を強制、働く権利を否定してきたのが20年前のタリバンである。

 アフガンは遠い無関係の国のように思われる。しかし、日本も含め世界中の多くの人が、この国の惨状に目を向けてこなかったことが9月11日の悲劇を招いたことを忘れてはならない。

 アフガンの治安の動向、女性や子どもをはじめとする人権-。現地の街頭でなければ確かめられないことがたくさんある。安全の確保は大前提。その上でメディアは可能な限り現場に迫り、アフガンの今後をしっかりと伝え続けていく必要がある。(共同通信記者 及川仁) 

2021/9/9
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