兵庫県丹波篠山市今田町上立杭の兵庫陶芸美術館で、開館15周年記念の特別展「出石焼-但馬の小京都で生まれた珠玉のやきもの-」(神戸新聞社など主催)が開かれている。江戸時代後期に出石郡細見村(現兵庫県豊岡市出石町)で始まった出石焼の、「雪よりも白い」と評される白磁や、写実的に植物などをかたどり、作り込んだ「超絶技巧」の作品が楽しめる。11月29日まで。(綱嶋葉名)
出石焼は、天保年間(1830~1844年)に、出石藩の奨励政策によって染め付けを中心に白磁や色絵などの生産が行われ、最盛期を迎えた。幕末から明治の混乱期に多くの窯場が閉じられたが、その後もさまざまな困難を乗り越え、令和の現在も焼き物作りが続けられている。
同館で出石焼のみの企画展を行うのは今回が初めてで、140点を3部屋に分けて展示する。作品は豊岡市出石町内の個人宅や東京国立博物館(東京)などから集めており、江戸時代後期から明治時代にかけて作られたものが並んでいる。
展示は大きく「染め付け」と「釉下彩(ゆうかさい)」、「上絵付け」、「白磁」の各技法による作品ごとに分けられている。青色が涼しげな「染め付け」による皿や「上絵付け」で多彩な色合いをまとった茶わん、白く輝く白磁のつぼなど、出石焼の特徴的な作風に触れることができる。
また、亀甲形をした透かしの中に立体的な梅花と菊花が浮かぶ「色絵金彩透彫草花貼付人物図壺(いろえきんさいすかしぼりそうかはりつけじんぶつずつぼ)(対)」や、超絶技巧を駆使し、竹格子のような囲いの中に細部まで作り込まれた菊やユリ、梅がびっしりと並ぶ「白磁籠目菊花(はくじかごめきっか)貼付壺」などが来館者のため息を誘っている。
同美術館学芸員の仁尾一人さん(51)は、「地元(兵庫)の人は、(身近なので)逆に出石焼を見る機会が少ないと思う。現代の作品とは違う、昔の技術を見ていただければ」と話していた。
午前10時~午後6時。月曜休館(11月23日は開館し、翌日休館)。一般千円など。また同館内では、現代陶芸を集めた「Message(メッセージ)」も同時開催している。同館TEL079・597・3961
