丹波

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味や香り、色の良さで全国に名をはせる「丹波マツタケ」=丹波篠山市内
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味や香り、色の良さで全国に名をはせる「丹波マツタケ」=丹波篠山市内
シカが食べ残したとみられるマツタケの石づき=丹波篠山市内
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シカが食べ残したとみられるマツタケの石づき=丹波篠山市内
マツタケがよく生える「ツボ」。シカを寄せ付けないよう、ネットを張り巡らせている=丹波篠山市内
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マツタケがよく生える「ツボ」。シカを寄せ付けないよう、ネットを張り巡らせている=丹波篠山市内

 松枯れや気候変動などで国内生産量の激減が危ぶまれるマツタケだが、全国ブランド「丹波マツタケ」の産地である兵庫県丹波篠山市内では近年、シカによる食害が深刻だ。10月中旬、入山権を持つ60代男性に同行して市内のマツタケ山に入ると、そこにはシカにかじられたとみられる無残な姿が。「においで人間より先に見つけてしまうんや」-。「絶滅危惧種」となった高級食材と獣害の戦いを追った。(金 慶順)

 ■「シロ」と「ツボ」

 朝、かごを背負った男性を追って、同市中部の山に分け入った。地元の人たちが共有地権者になっているマツタケ山だ。収穫期の9月10日~11月14日は「止め山」といい、入山権を持たない人は立ち入れない。

 山中に張り巡らされた防獣ネットをまたぐと、足元を指された。

 「そこ、出るところやから踏んだらあかんで」

 慌てて足をどけた。地中には「シロ」と呼ばれるマツタケの菌床が広がっている。地面を軽く掘ると、白い糸を混ぜたように土が白っぽくなっていた。

 マツタケの菌糸はアカマツの根の先に付き、その栄養をもらって成長。9月以降、地温が18~19度を下回った刺激でシロからマツタケが発生するという。

 「シロがあって毎年マツタケがよく生える場所が『ツボ』。山には何カ所かツボがあるんや」

 シカを寄せ付けないよう、ツボはネットで囲われていた。足を踏み入れると、木に取り付けたセンサーが動きを感知して光り、「ワンワン」「ウーウー」と鳴る。だが「シカは簡単にネットを破るし、音にも光にもすぐ慣れてしまう」と頭を悩ませる。

 ■シカと取り合い

 山に入って数十分。ツボの斜面で、数本のマツタケが顔を出しているのを見つけた。男性が根元の方ををつかんで持ち上げると、長さ8センチほどの、白っぽく美しい姿が現れた。

 一方、すぐ近くではシカに食べられたとみられる石づきの残骸が見つかった。地中に固い根元だけが残っている。男性は今年、1日に10本ほどの食害を確認する日もあったという。

 「『そろそろ収穫か』と目を付けていたマツタケが翌日には食べられてしもうてる。十数年前はシカの姿が増え、一晩で100本以上食い荒らされたことも。マツタケのおいしさを覚えてしまったんやろう」

 県丹波農林振興事務所によると、県内に生息するシカの推定頭数は2002年に約8万頭だったが、09年は約14万頭に増加。駆除を進めたところ、18年は約11万頭となった。

 男性はツボの周囲にシカが嫌がるとされる白い布や蛍光テープを張ったり、収穫の近いマツタケにかごをかぶせておいたりと試行錯誤する。この日は5時間ほどで計約2・5キロを収穫。不作だった昨年よりは多いが、それ以前に比べると半減したという。

 ■見えにくい実態

 国内では今年、岩手などでマツタケが豊作といわれる。だが統計によると国内生産量はピークに比べて激減。1941年は1万2千トンを記録したが、近年は100トン未満が続き、昨年は14トンにとどまった。

 一方、マツタケは市場に出荷される以外に、生産者が料亭や旅館へ直接持ち込むケースが多く、「生産量の実態をつかみにくい面がある」と同事務所。「シカに食べられた」という報告も届いているが、被害額は不明という。

 減少は、山の手入れ不足も一因とされる。成育にはほどよい日当たりと風通しが必要で、さらに地面に落ち葉が積もると富栄養で成長が阻害される。雑木を適度に伐採しなければならないが、手入れは行き届いていない。市内では「クマが出るから山に入れない」との声も聞かれる。

 「一昔前まで、マツタケ山を持つと大きな収入源になった」と男性。だが近年は環境変化や食害でほとんど収穫できない年もあり、「入山権の落札にはリスクがある」と話す。

 男性は個人による獣害対策に限界を感じている。「行政が長期的、広域的な駆除に取り組まないと、全国に誇る丹波マツタケは採れなくなってしまうのでは」と危惧している。

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