総合 総合 sougou

  • 印刷
動画一覧へ
自作を前に神戸人形づくりの楽しさを語る吉田太郎さん=神戸市東灘区(撮影・中西幸大)
拡大
自作を前に神戸人形づくりの楽しさを語る吉田太郎さん=神戸市東灘区(撮影・中西幸大)
カッパ型の神戸人形=神戸市東灘区(撮影・中西幸大)
拡大
カッパ型の神戸人形=神戸市東灘区(撮影・中西幸大)
細かな作業の連続によって1体の人形が仕上がる=神戸市東灘区(撮影・中西幸大)
拡大
細かな作業の連続によって1体の人形が仕上がる=神戸市東灘区(撮影・中西幸大)

 少なからぬノーベル賞科学者が幼き日、ラジオやカメラを分解し、叱られながら成長してきたと聞く。今、目の前には手のひら大の神戸人形が一つ。台座のつまみを回すたび、カッパが右手でビールを飲み、左手でキュウリを食べる。内部はどんな構造なんだろう。分解する代わりに、作者の吉田太郎さん(51)=神戸市東灘区=から作り方を教わった。(井原尚基)

 神戸人形は明治以降、ひょうきんな顔やユーモラスな動きが人気を集め、外国人向けの日本土産として海外に広まった。戦後も販売されたが、阪神・淡路大震災で生産中止に。2015年からは人形劇の美術家として活躍する吉田さんが、妻の綾さん(53)と制作や修理を手掛ける。

 無数の工具が置かれたアトリエの一角には、カッパ人形のパーツらしきジョッキや首、頭上の皿が整然と区分けされている。手には水かきのような切れ込みも。部品が多い神戸人形だが、自動化された工程はなく、全て手作業で行われている。

 「木を切り出して角材にして、旋盤で形を整えて、仕掛けをして3、4回塗って、改めて調整し直して糸を張って、組み立てて-」と、吉田さんは工程を説明する。同じ種類の人形を5、6個ずつ同時に作り、完成に1週間ほどかかるそうだ。見る人、触れる人を楽しませる人形だが、制作は「ものすごく地味な作業ばかり」と吉田さん。中でも「面白くて安全だから」と選んでくれたのは「調整し直して」の辺りの作業だ。

 間借りした作業机には、カッパの胴体と両手と首と口が置かれている。どれも緑や赤色に塗られ、両手のパーツには2本ずつ糸が付いている。糸の素材は企業秘密。かつての神戸人形は糸が切れやすいのが弱点だったといい、吉田さんは理想の糸を今も探し続けている。さまざまな繊維を燃やしたり、顕微鏡で観察したり。その姿は、発明王エジソンが白熱電球の素材を求め、実験を重ねたエピソードをほうふつさせる。

 まず挑んだのは、糸を通すため首などに開けられた小さな穴に、アルコールランプで熱した鉄線を出し入れする作業だ。穴の中のさらに小さなささくれを焼き、糸をスムーズに動かすための一手間。熱した鉄線が赤くなったことに喜んでいたら、「スピーディーにしないと冷めてしまいますよ」と優しくアドバイスをいただく。早速、油断してしまった。

 次は、つまみと台座を接続させる。つまみが台座から飛び出さぬよう、つまみに電動ドリルで穴を開け、接着剤を塗った竹ひごを差し込む。刃の太さは、部位によって0・1ミリ単位で使い分ける細かさだ。失敗しないように神経を研ぎ澄ます。

 首などの穴に糸を通す作業も体験した。糸は全部で4本。カッパの口を開け閉めし、首を左右に振り、両手を上下に動かす。昔の神戸人形は、口と首の糸は別々だったが、吉田さんは1本の糸が兼ねるように改良した。「その方が合理的だから」。さらりと話す口ぶりに敬服する。

 つなげたばかりの糸を引っ張り、カッパが動くのを見たら、神戸人形に命を吹き込んだ気分。冷や汗をかき続けた2時間の作業はしかし、全工程の1割にも満たないそうだ。

【よしだ・たろう】1969年神戸市生まれ。京都産業大在学中に人形劇の世界に進む。神戸人形はホームページ「神戸人形のウズモリ屋」などで販売。今年4月、日本玩具博物館(姫路市)の所蔵品を中心に紹介する書籍「神戸人形賛歌」(神戸新聞総合出版センター)を刊行した。

総合の最新
もっと見る
 

天気(11月28日)

  • 14℃
  • ---℃
  • 0%

  • 13℃
  • ---℃
  • 10%

  • 15℃
  • ---℃
  • 0%

  • 14℃
  • ---℃
  • 0%

お知らせ