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自作の「SWEATY JACKET」(1982年)の前で撮影に応じる日比野克彦さん
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自作の「SWEATY JACKET」(1982年)の前で撮影に応じる日比野克彦さん
展示室前で「明後日のアートの学校」を紹介するコーナー。活動を知らせる新聞を手にする編集長の佐野桃和子さん=姫路市本町、姫路市立美術館
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展示室前で「明後日のアートの学校」を紹介するコーナー。活動を知らせる新聞を手にする編集長の佐野桃和子さん=姫路市本町、姫路市立美術館
「白い塊」シリーズなど90年代の作品が数多く並ぶ貴重な機会となっている=姫路市本町、姫路市立美術館
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「白い塊」シリーズなど90年代の作品が数多く並ぶ貴重な機会となっている=姫路市本町、姫路市立美術館
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 アートで人と人を結ぶ。「つながりが生きる力になっていく」。そう信じて、現代美術家日比野克彦さん(63)が、兵庫県姫路市で市民参加型のアートプロジェクトに取り組んでいる。姫路市立美術館の「日比野克彦展『明後日のアート』」(神戸新聞社など後援)では、段ボールによる立体作品や絵など約200点を展示。社会の課題に向き合って、人をつなぐ芸術活動が、生きる喜びを実感させる。(小林伸哉)

 いつもは厳かに大理石で覆われているけれど…。展示室前の空間は、段ボールがびっしり張られ、親しみやすい姿に変身した。

 アートプロジェクト「明後日のアートの学校」の紹介スペースだ。日比野さんらは、全国各地で続ける七つの企画を、本年度は姫路市内で滞在しながら展開している。

 その一つ「明後日朝顔プロジェクト」は2003年に新潟県でスタート。種をさまざまな地域で引き継ぎ、住民らとアサガオを育て、コミュニケーションを促す。姫路市では、書写山円教寺や学校園、企業など約100カ所で栽培中だ。

 日比野さんは「アサガオに水をやる。人におはようって声をかける。種が採れたら『まきたいね』と来年のことを思う。それが生きる力になる」と語る。

 「アートは日常から人と人をつなぐ。そして、災害のような非日常のとき、想像力を発揮して『よし、明日も頑張ろう』と思える力になる」。関わり合うアートは生きるための実践だ。

 「アートって『見えないもの』をかたちにする。まさに生きる力。星や月を見て、きれいだなと感じた人々が、想像して物語を生んできた。科学だけで人間が生きることはできない。心の生きる力がないと」

 地球温暖化などを憂慮して「百年、千年単位の課題は『今が分岐点』」と考える。家島諸島で子どもたちと海の漂流ごみを集めて物語を作るなど、多彩な企画に取り組んできた。「『海を守りたいね』と心からの変容がないと、環境を守る行動は続かない。心を動かすのは芸術の力」と信じる。

     ◇

 展覧会では、時代の空気感や課題を鋭敏な感性ですくいとった作品群が並ぶ。作家活動を始めた80年代は「輝く未来が待っている、と信じて疑わなかった時代」と日比野さん。ウエディングケーキやバイク、ピアノなどを題材にした明るい色彩の作品が印象的だ。

 しかし、90年代になるとバブル経済は崩壊し、阪神・淡路大震災や地下鉄サリン事件が起きて、安全神話が崩れた。「内なるものに問いかけるような作品が増えた」と振り返る。

 91年には、ウミガメが現れる屋久島の浜辺で漂着ごみを拾って、東京の電話帳に突き刺した作品で、環境問題に警鐘を鳴らした。

 立体の「白い塊」シリーズ(90年)について、日比野さんは「力強い重機がモチーフなのに、壊れやすい段ボールのもの悲しさがある」と語る。ショベルカーや無限軌道の部材をばらばらに表現した。「これまで一枚岩だったものが崩壊していく」。そんな時代の不安感を表現したという。

 積極的にプロジェクトを展開する2000年代以降の作品展示は圧巻だ。約1・5メートル四方の絵99枚がずらり。07年、金沢21世紀美術館に全国から集まったアサガオの種をカラフルに描いた。小さな種から、大いなる生命の力と可能性があふれだすよう。見る者に生きる喜びを実感させる。

 「日比野さんは他者を生かすことに美を見いだす」と、姫路市立美術館副館長の不動美里さん。「一つ一つの作品に優しさ、繊細さ、はかなさ、危機感、緊張感が凝縮している」と評する。「生きている中で何が大切か。深いところで、気付きをもたらしてくれる」

 展覧会は11月7日まで。月曜休館。一般千円ほか。今月17日から芸術の核心に迫るトークイベント(要事前予約)を開く。来年3月まで続く「明後日のアートの学校」や催しの詳細は、姫路市立美術館のホームページで紹介。同館TEL079・222・2288

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