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 兵庫県宝塚市立長尾中学校の柔道部顧問の男(50)が生徒2人に重軽傷を負わせた傷害事件で、兵庫県教育委員会は男に体罰としては異例の懲戒免職処分を下した。取材からは、学校や市教育委員会が多くの局面で主体的に動かず、手をこまねいていた「傍観」の様子が浮かび上がる。体罰に寛容とも受け取られかねない現場でのやりとりも明らかになってきた。(取材班)

 9月25日午後6時半ごろ、長尾中の校長室。校長は男に事情を聴きながら、こう考えていた。

 「柔道を始めたばかりの生徒だから、多少のけがはあっても当然か」

 さかのぼること2時間前、武道場。男は1年生の部員に一方的に技を仕掛ける。10回以上も投げ、首を絞めて意識を失わせると、激しいビンタで目覚めさせて柔道技を続けた。

 1時間後の5時半ごろ、生徒の親から抗議の電話が入る。「息子が暴力を受けた」。教頭が慌てて男に聴取を始めた。しばらくして外出先から戻った校長が加わった。

 校長室で男は淡々と答えたという。「いつもより厳しい練習だった。多少のけがはあり得る」

 校長は「練習なら仕方がないか…」と深くは追及しなかった。聞き終えて市教委に電話し、「いきすぎた『指導』があった可能性がある」とだけ伝えた。

     ◆

 数日後、市教委から報告を受けて中川智子市長が幹部らに持ち掛けた。

 「市教委から被害届を出すことはできませんか」

 背骨を折って全治3カ月と判明する生徒は当初、多発性挫傷で全治5日と診断された。程度は軽いとはいえ、明らかな傷害事件だ。警察に事件化してもらうのは当然と考えた。

 先行して議論していたのが隣の尼崎市だった。刑事訴訟法は公務員が事件を知った場合、警察に届ける義務を定める。教員の体罰問題に揺れた昨年を教訓とし、事件性が疑われる体罰を市教委が把握すれば、速やかに刑事告発すべきだとする方針を明文化していた。

 しかし、宝塚市教委はそれを知りながら、深く検討することなく、告発を見送ることを決めていた。「告発義務はあっても、体罰は被害者の意向を聞く必要がある。教委が告発した事例は全国を見てもない」

 「それなら被害届を出してもらうように保護者を説得してほしい」と中川市長。後に男に体罰で3度の処分歴があることも判明して強調した。「学校を治外法権にしては駄目よ」

     ◆

 10月2日夜、市教委の担当者は被害者家族と面会し「被害届を出すのを(市教委は)止めません」と告げるにとどめる。市長の要望は棚上げにされた。

 実は前日夜に市教委幹部数人で協議し、状況をこう把握していた。「親は被害届を出すかどうか悩んでいるようだ」。警察に訴えれば、子どもが男に報復されるかもしれない。柔道部や学校に迷惑をかけるかもしれない-。そんな揺れる気持ちを知って、積極的に要請はできないと判断した。

 結論は親任せだった。「被害者でないからそんなことが言えるんだ」。市教委の言葉を聞いた親は怒りをあらわにした。

 生徒が教員に暴行すれば学校が通報できるのに、生徒が教員に暴行されたらどうしていいか分からない。市教委幹部が声を落とす。

 「今思えば告発すべきだったと思うが、十分な議論がなかった。体罰を絶対に許さないという視点が欠けていた」

 被害に遭った生徒のためにできたことは、ほとんどなかった。

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