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北口正人さん=大阪市北区(撮影・後藤亮平)
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北口正人さん=大阪市北区(撮影・後藤亮平)
感染防止対策で、ステージ上のマイクと客席の間に透明のアクリル板を設置した=大阪市北区(撮影・後藤亮平)
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感染防止対策で、ステージ上のマイクと客席の間に透明のアクリル板を設置した=大阪市北区(撮影・後藤亮平)

 大阪、東京、横浜の「ビルボードライブ」は、国内外の音楽家のライブを身近に堪能でき、食事も楽しめる場所だ。しかし、新型コロナウイルスの感染拡大で長期休業や、開業延期を余儀なくされた。その後、ビルボードジャパンの最高経営責任者(CEO)で阪神コンテンツリンク社長の北口正人さん(59)は、全国の同業者に呼び掛けて「日本ライブレストラン協会」を設立、10月に感染拡大予防ガイドラインを制定した。コロナ禍が続く中、どんな展望を描いているのか。北口さんは「ライブレストランは、若手アーティストらの発表の場。若手が育つ文化を守りたい」と語る。(網 麻子)

 -ライブレストランとは、あまりなじみのない言葉です。

 「ビルボードライブのように、お客さんごとにテーブルといすを用意し、着席した状態で食事を楽しみながら、ジャズや大人のポピュラー音楽などのステージを鑑賞する形を取っています。貸し館ではなく、原則として自主事業を手掛け、全国各地にあります。お客さんが立って鑑賞するライブハウスとは異なります」

 -なるほど。ビルボードライブではコロナでどんな影響が?

 「大阪、東京は2月28日から約5カ月間休業し、横浜は4月12日の開業予定が約3カ月延びました。3~5月、阪神コンテンツリンクはビルボードライブを含め、月単位の営業損失が億単位になり、大きな痛手でした。再開後、8、9月のステージは通常の半分ぐらい。徐々に増え、12月は大阪で毎日になりました。大阪は約300席あります。各店ともお客さんは収容率最大80%でやっています。ご年配のファンや、法人会員の方は出控えの傾向があり、完全復活まで時間はかかると思いますが、ちょっと光が見えてきました」

 -休業の間、従業員にはどう対応しましたか。

 「安心して働いてほしいと伝えました。一般的な飲食業と違い、ライブ前に食事を提供する特殊な店舗運営をしています。今いる従業員が大事なので、休業中も全額に近い給料を補償しました。開業から30年、阪神・淡路大震災や東日本大震災の危機を乗り切ったから、コロナのワクチン開発まで頑張っていこう。どうしたら安心してお客さんに来てもらえるのか、コロナのせいにせず必死に考えてほしい、とも伝えました」

 -同じ頃、同業者らに協会をつくろうと呼び掛けたのですね。

 「ライブレストランは個人経営が多い。営業的には瀕死(ひんし)の重体にもかかわらず、存続させようと必死にもがいていました。ライブレストランやライブハウスは、メジャーを目指す若手や地元のアーティストたちの発表の場です。そういう場があるから、若い子が育っていくと思う。なくなると、演奏する場が失われる。将来的に日本の音楽を支えるアーティストが少なくなっていくということなんですね。そうなると、ビルボードも影響を受ける。音楽が育っていく文化を守りたいと思いました」

 「できるところから経済を再開するしかないっていうのが、私の考えです。ライブレストランの業態を、政府やお客さんに知ってほしいと思いました。東京の六本木サテンドールの店長に話をしたら賛成してくれたので、6月に協会を設立しました。サテンドールの店長が会長、私が副会長を務め、事務局は阪神コンテンツリンクに置きました」

 -協会の独自のガイドラインはどんなものですか。

 「厚生労働省や内閣官房、それに感染症の専門家を交え、時間をかけて制定しました。レストランスペース内やステージ上などで11項目の対応策と、ライブレストランの定義を示しています。ビルボードライブの例で言うと、ステージのマイクの前にアクリル板を置き、演奏中はお客さんにマスクをしてもらう。公演中は非常口やステージ裏の搬入口などを開放し、空気の流れをつくる。QRコードを使った入場や精算など、できるだけスタッフと接触しない方法を導入し、客席やトイレなどは抗菌のコーティング処理を施しました」

 「会社の監査部門に感染対策をチェックしてもらい、ここまできっちりやっているところはないという意見をもらっています。私としては、感染対策の模範店にならなくては、と思っています」

 -協会の運営で見えてきたことは?

 「現在、兵庫県の3店を含む全国47店が加盟していますが、もっと増やしたい。協会をつくって一致団結すれば、個人ではできないこともできます。政府との交渉もそう。実際、お客さんの収容率は100%が認められました。協会のお店なら安心と、イメージを変えていきたい。協会として何ができるのか、まだまだこれからです」

 -コロナ後、生の音楽の素晴らしさを改めて感じました。

 「私は7月中旬、ビルボードライブ横浜の開業日、5カ月弱ぶりにライブを聴きました。歌手はMISIA(ミーシャ)さん。体で音楽を聴き、感動した。どんなにいいステレオで聴いても、そうはならない。ライブって、アーティストが発する気がそのまま伝わってくる。生きてて良かったと感じる。今はコロナ禍で心が沈んでしまうし、暗くなるじゃないですか。こういうときだからこそ、ライブがいると思います」

 -ライブレストランに来る人に伝えたいことはありますか。

 「お客さんが、ライブレストランで楽しんだら、会員制交流サイト(SNS)で発信してほしいですね。感動したよ、感染対策もやっていて安心したよって。ライブ文化を守るために投稿してほしい。それが一番のお願いです」

【きたぐち・まさと】1961年大阪府出身。和歌山大卒。阪神電鉄入社後、90年の大阪ブルーノート開業で運営責任者に。2006年、米国ビルボードと契約し音楽事業のブランドを変更。16年から阪神コンテンツリンク社長。

〈ひとこと〉北口正人さんの著書「billboardを呼んできたサラリーマン」(ダイヤモンド社)は、電鉄会社の社員たちが、音楽業界のオンリーワンを目指した30年の軌跡がつづられる。このパワーで、コロナ禍の業界を引っ張ってほしい。

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