ひょうご経済プラスTOP 経済 業務用特化の戦略的中 パナソニック看板PC製造する神戸工場30年の歩み

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業務用特化の戦略的中 パナソニック看板PC製造する神戸工場30年の歩み

2020.09.11
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レッツノートの最新機種(左)と初代機種を持つ矢吹精一神戸工場長=神戸市西区高塚台1

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神戸新聞NEXT

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 パナソニックが、神戸市西区に神戸工場を設けてから今年で30年となる。看板製品のノートパソコン(PC)「レッツノート」は、2017年度から3年連続で過去最多の生産台数を更新するなど、業務用を中心に支持を集めてきた。「ビジネスパーソンの使い勝手をいちずに追い求めてきた成果」と矢吹精一工場長。レッツノートの誕生と成長の足跡をたどった。(長尾亮太)

 神戸工場は1990年6月、大阪府門真市にあった同社の情報通信機器部門を全面移管する形で開設された。当初生産したのはワープロで、翌91年からデスクトップ型やノート型のパソコンを作り始めた。

 96年、顧客ターゲットを企業に絞って立ち上げたブランドがレッツノートだ。パソコンの後発組だった同社は、納入先の声をじかに聞きながら開発を進められる業務用に軸足を置く一方、将来的な価格競争の激化を見越して、一般消費者を主な照準から外す決断をする。「当社が最も役立てるのは『企業の困りごとを解決すること』と見定めた」。矢吹工場長は振り返る。

 同社は、仕事でパソコンを持ち運ぶ人のニーズを洗い直した。この結果、軽量化▽長時間使えるバッテリー▽頑丈さ-などの差別化しやすいポイントが浮かび上がった。「本体を軽くするために外装板を極限まで薄くした」と当時、開発を担った作田繁昭マーケティング部長。コンセントがなくても外出先でパソコンを長時間使えるよう、自社で開発した高容量バッテリーを搭載し、消費電力を抑える回路を設計した。

■戦略がヒット

 年間生産台数は05年度に30万台、07年度に35万台を突破し、17年度に40万台に届いた。19年度は基本ソフト(OS)「ウィンドウズ7」のサポート終了に伴う買い替え需要も取り込み、45万台に達した。IT調査会社のMM総研によると、持ち運び用(画面が14インチ未満)のノートパソコン市場でレッツノートは2割前後のシェアを保ってきた。

 同社の中村成希研究部長は「業界で相次ぐ再編の波をくぐり抜けられたのは、持ち運び可能なタイプの業務用に特化したため」と指摘。「業務用は個人用と比べてスマートフォンやタブレット端末の浸食を受けにくく、パソコンを大量調達する企業にとって、頑丈さは価値が高い」と分析する。

■顧客と密着

 同工場の見学者は年間2千人を超す。顧客企業に生産現場を見てもらうと同時に、ニーズを聞き取って次の開発に生かすためだ。子ども向けに製品の組み立てイベントなどを催し、将来のファンづくりに力を入れてきた。

 同工場は、コールセンターや製品修理の機能も備える。「顧客の業務を止めない」を合言葉に、不具合の生じた製品を受け取って修理する。

 矢吹工場長は「顧客と密接な関係を保ち、育ててもらいながら歩んできた30年だった」と総括する。作田マーケティング部長は「ハードウエアを進化させるとともに、作業の効率化につながるソフトウエアをさらに提供し、利用者が創造的な仕事に充てられる時間を増やしたい」と、今後を見据える。

【パソコン事業の再編】性能の差別化が難しくなったパソコンは、消費者が価格で商品を選ぶ汎用(はんよう)化が進み、価格競争力を持つ海外メーカーが国内市場を席巻した。NECと富士通は企業向けの販売を除くパソコン事業を、いずれも中国の聯想(レノボ)グループに売却。「ダイナブック」で知られた東芝は、事業をシャープに譲渡した。「VAIO(バイオ)」ブランドのソニーは、国内の投資ファンドに事業を引き継いだ。