正平調

時計2020/09/12

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科学に国境はないが、科学者には祖国がある-。狂犬病ワクチンの開発で知られる細菌学者パスツールの言葉という。科学研究とその果実は人類みなの財産なのに、時として“祖国第一”のために囲い込まれる危うさをはらむ◆「がんばって」と政府が科学者の背中をたたくうちはいい。「早くしろ」と尻をたたき出したらどうなるか。兵器開発は言うに及ばず、とかくろくなことにはならない◆やたら尻をたたき出した政治圧力への、いわば科学の抵抗だろう。欧米の製薬会社9社が共同声明を出した。いわく、新型コロナウイルスのワクチン開発は「安全性を最優先する」と。至極まっとうな話である◆米国のトランプ政権は「急げ急げ」とげきを飛ばし、ロシアは一部治験を先送りして「ワクチンができた」とアピールしている。人気取り。国威発揚。思惑にまみれた開発競争に「安全」への敬意は見られない◆折しも、ワクチン研究の先頭を走っていた英国のアストラゼネカ社が治験を中断した。深刻な副作用が疑われるケースがあったという。のどから出かかっていた手をいったん引っ込め、ここは冷静に見守りたい◆求められるのは怜悧(れいり)な科学の目である。「たぶん大丈夫」なんていう政治色に濁ったワクチンはほしくない。2020・9・12

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